歯周病と全身疾患
歯周病は、歯を失う一番の原因でもありますが、様々な疾患や全身状態に影響を及ぼす恐れがあることが指摘されています。歯をよく磨く人で1000~2000億個、あまり歯を磨かない人で4000~6000億個、さらに歯をほとんど磨かない人では1兆個もの細菌が口の中に住みついています。レッドコンプレックスと呼ばれるPg菌Td菌Tf菌などが発症に深くかかわっていることがわかっています。歯周病が悪化しないように日ごろから気を付けることは、お口の健康だけでなく、全身の健康を守ることにもつながるのです。
全身疾患・状態にかかわる歯周病のリスク
敗血症
「菌血症」とは、歯周病菌などが血液中に侵入する現象のことです。
歯周病にかかって歯肉に炎症が起こると、ブラッシングなどの際に出血します。そこに細菌などが侵入することで菌血症を引き起こします。
菌血症によって細菌などが全身にまわってしまうと、「敗血症」の原因になります。敗血症は細菌感染症がからだ全体に波及した重篤な状態をいいます。
治療しないとショックや多臓器不全など、さまざまな疾患の要因となる怖い病気です。
慢性腎臓病
早産・低体重児出産
妊娠している女性が歯周病にかかっていると、早産や低体重児出産のリスクが高まります。
歯周病菌が血液中に入って子宮内へ感染すると、おなかの赤ちゃんの成長を阻害します。さらに子宮の筋肉を収縮させる物質をつくってしまうため、早産となってしまうことがあるのです。
認知症
歯周病が認知症を引き起こすメカニズムも明らかになってきました。
脳血管障害
糖尿病
慢性の歯周炎と糖尿病は互いに影響し合うといわれています。例えば、歯周病の炎症によって、インスリンを処理する細胞に影響が出たり、糖尿病に感染していると免疫力が低下するなど、歯周病と糖尿病は密接に関係しているのです。
歯周病を治療すると、炎症を起こす物質の生産量が減少し、結果として最終的に血糖値が下がり、糖尿病の治療にも効果があるといわれています。
心疾患
口腔内の細菌が心臓の弁やその周りに付着して増殖して起きる感染症で、心臓弁膜に障害のある方に起こりやすい病気です。歯周病菌は付着力が強く、「バイオフィルム」という細菌の膜をつくる能力も高いので、心臓の内部の膜にまで付着してしまうことがあるのです。
「病巣感染症」とは、慢性疾患のある病巣が原因となって、別の臓器に二次的な疾患が発生することをいいます。このうち、病巣が歯にあるケースを「歯性病巣感染症」といいます。
二次疾患としては、リウマチ性関節炎、亜急性心膜炎(あきゅうせいしんまくえん)、心筋炎、神経炎、光彩毛様体炎(こうさいもうようたいえん)、ループスエリテマトーデス、皮膚炎、膿胞症、敗血症、糖尿病、循環器障害、細菌性心膜炎、貧血などさまざま。
歯周病は典型的な慢性感染症です。したがって歯周病菌による菌血症はからだの別の部分で歯性病巣感染症を引き起こす可能性も高いといえるのです。
メタボリックシンドローム
誤嚥性肺炎
口腔内の細菌などが肺に入ることにより起こる肺炎が「誤嚥性肺炎」です。高齢の方や寝たきりの方など、飲み込む力が低下している方に多くみられます。
健康な人であれば、気管支や肺に細菌が達しても、からだの中の免疫機能によって消化され殺菌されます。しかし歯周病によって免疫力が低下していると、細菌が増殖し肺炎になるリスクが高まるのです。
低栄養
歯周病は口の中の慢性感染病であり生活習慣病の一つです。40歳以上の8割以上が何らかの症状を持つといわれています。歯周病は大人が歯を失う最大要因であり、歯を失うと義歯(入れ歯)を作りますが、義歯の噛む力は自分の歯と比べて非常に弱くなります。噛む力が弱くなると軟らかく食べやすい物を好むため、食べられるものに偏りが出たり食事量が減少したりと、結果として体重減少や低栄養を招きます。
骨粗鬆症