いえさき先生のコラム
上下顎の位置関係を考慮して行っている咬合調整法
①最適な上下顎の位置関係とは?
顎は本位あるべき位置とはどこか、上顎に対して下顎がどこに位置すれば良いかということです。その位置は人それぞれ違います。どうやったら最適の位置関係を探し出せばいいのでしょうか。
口や顎を動かしてみれば分かりますが、私たちが噛むときに動いているのは下顎です。上顎が頭蓋骨と一体なっているのに対し、下顎は筋肉によって頭蓋骨からちょうど操り人形のように吊り下げられるような形でついています。
そのおかげで下顎は、上下、前後、左右ほか回転を入れると6方向に自由に動けるのです。ですから、よい噛み合わせとは、下顎の位置が安定していてしっかり噛める噛み合わせなのです。
また、この下顎を支えて動かしているのは筋肉ですから、筋肉によって下顎の位置が決められています。この筋肉が決めた位置、つまり筋肉が楽で安静を保てる位置で噛んでいれば問題は、起こりません。
しかし、いろいろなの事情があり、この位置とふだん噛んでいる位置がずれてしまうことがあり、そのために筋肉にストレスがかかり緊張して不調をきたすことで筋肉痛みにはじまり、全身にまで及ぶさまざまな不調につながるのです。
②噛み切る前の当たりを予測して調整することが大切です。
咬む位置にずれが出た場合、筋肉が決める筋肉が楽な位置に下顎を戻してやればいいわけです。
ところが、そう簡単にいかないものです。口の中に目印がついているわけでもないので、「筋肉が楽で安静を保てる位置」を、どうすれば見つけられるのでしょうか。
歯医者に行かれたときに経験があるかも知れませんが、口の中に赤や青の小さい紙を入れられ、「はいカチカチ噛んで」と言われたことはないですか?この薄い紙は咬合紙というもので、それをカチカチ噛むと歯の当たりの強いところに濃い色の点が付きます。その部分を少し削っててはまた、紙を咬んでもらうことを繰り返して、噛み合わせを調節していくのです。これは、どこの歯医者でも広く行われている咬合調整の方法です。
しかしこの方法には大きな落とし穴があります。まずひとつ目は、噛んだあとだけを見ても、最初にどこに当たってどうゆがんでそこに達したかという経路が見えないこと。
もうひとつ大切な点は神経筋機構と言われる歯と筋肉と脳の連携した働きです。筋肉は神経と連携して、複雑な動作を反射的に行います。たとえば食べ物を口に入れると、口の中に備わったセンサーが働きそれが何か瞬時に脳が判断し、その大きさや硬さに応じて噛み方を微妙に調節します。無意識にそれが出来るのは、筋肉と神経が連携してさまざまな変化にすばやく対応するからです。
このような神経と筋肉と脳の協同作業を神経筋機構といい、からだの筋肉のどこかに異常があるとそれを補うように働きます。このおかげでからだ全体のバランスが保たれ通常は不調をきたすことなくいるわけですが、それがかえって正しい噛み合わせの邪魔をしていることがありえるのです。
たとえば、右が痛くて噛めないと左で噛んだり、前歯が強く当たるとすばやく顎を後ろに引いて奥で噛むようにしたり、噛んだ瞬間に反射的に作用して間違った噛み合わせに導いてしまうこともあり得るのですね。こうして、現状に適応できるように顎をずらして噛んでいてもずれが少量であれば、何事もなく症状が出ず経過しますが、だんだんとその量が体(顎)の耐えられる範囲を超えると症状が出始めます。
「カチカチ噛んで」と言われたときにもその作用が働き、正しい噛み合わせではないところで噛んでしまいます。それをもとにかみ合わせを調整しても上手くいくはずがないですね。
つまり、上下の歯が当たった瞬間に神経筋機構が働くわけです。こうしたことから、いえさき歯科では、咬合紙をカチカチ噛んでの調整は、あくまで参考程度と考えています。
いえさき歯科では噛み切った位置でついたインクの跡も参考にしますが、歯が物をかみ切る前の位置を捉えるために、ワックスやパテ状のシリコンを咬むことによって調べ食物を咬んだ状態に似た行為を調整手助けとして使用しています。
咬合紙のインクの跡を絶対的に信じて調整し続けると、大幅な顎のずれをきたし、そののち大きな問題になることがあるので、注意が必要です。
この記事のお問合せ先:阿倍野区西田辺のいえさき歯科
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