大阪市阿倍野区西田辺にある歯科 審美治療・矯正治療なら いえさき歯科へ

いえさき先生のコラム

予防歯科歯周病

ブラッシングで歯ぐきの抵抗力を高めましょう。

大昔ある時、人間は火を使うことで、自然界にある硬い食べ物を軟らかくして食べる方法を見つけました。その便利さと引き換えに、歯周病にかかるようになったと考えられます。

その証拠に、野生のサルは歯周病になりません。

どうして野生のサルは歯周病にならないのでしょうか?

たとえば、野生のニホンザルは、木の葉や皮を剥いだり小枝を咬んだり、木の実、花や昆虫など、季節の変化に応じて自然界にある多くの食物を食べて生活する雑食動物です。

それらの食物には、砂糖はほとんど含まれていません。

しっかり噛んで食べると、自然に歯ぐきに刺激が与えられ、歯も掃除されるために歯垢もつきません。

しかし、動物園のサルに人と同じ食餌を与えると歯周病になります。

また、イヌやネコのペット用の餌には堅いカリカリタイプと軟らかいウェットタイプがありますが、ウェットタイプばかり与えていると、イヌやネコでも歯周病になります。

歯周病菌は、ほとんどの人の口の中に存在していますが、必ずしもすべての人が歯周病になるわけではなく、ならない人もいます。

歯周病は、細菌の感染力が生体の免疫力(病気に対する抵抗力)を上回まわることによって引き起こされます。端的にいうと、歯周病は体の免疫力がさがったときに進行するのです。

風邪を引くなどして体調の悪いときに、歯ぐきが腫れる経験をした方は多いと思います。これなどはまさに、体の免疫力が落ちて一時的に歯ぐきが細菌に感染したり、元からかかっていた歯周病が悪化したりした結果です。

したがって、体調が悪くなって体の抵抗力がさがったときでも、「歯ぐきの抵抗力をあげることができれば、歯周病の攻撃力を防ぐことができ、歯周病は予防できます。

歯ぐきの抵抗力を上げる一番の方法が、歯ブラシによる歯ぐきへの適度な機械的刺激(ブラッシング)いわゆる歯茎のマッサージです。

歯周病予防だけではなく歯の病気の予防にとって最も有効なのは「ブラッシング」なのです。

 

歯周病を防ぐブラッシングのコツ

ブラッシングをすればいいといっても、ただ漠然と歯磨き(ブラッシング)をするだけでは効果はありません。ポイントは、「目的」と「やりかた」です。

なんのために、どこを、どれくらい、どのようにブラッシングするかで、歯周病予防の効果は天と地ほども違ってきます。

歯周病予防の歯磨き(ブラッシング)というと、歯周病の原因菌を取り除くのが目的と思われがちです。

しかし、ブラッシングの本来の役割は、歯周病の原因菌を取り除くことに加えて、「歯ぐきの抵抗力を高めること」なのです。

そのための方法を紹介しましょう。

歯周病予防のためのブラッシングでは、歯磨き剤はひつようありません。先に紹介した「ふつう」の硬さのナイロン製の歯ブラシでかまいません。

 

歯の表面と裏側は最もよく行われている「スクラビング法」

では、具体的な歯磨き(ブラッシング)法を紹介しましょう。

当院では、歯の表面と裏は「スクラビング法」、そして歯と歯の間は「つまようじ法」や歯間ブラシの使用をおすすめしています。

いずれの磨き方でも、歯ブラシはペンを持つくらいの優しい力で握り、ブラッシングの間、同じ力加減を維持するようにしましょう。

まずは「スクラビング法」です。

①歯と歯ぐきの境目に歯ブラシを軽く当てます。歯ブラシの毛先の角度は、歯の表面に垂直(90度)です。歯の裏側は少し角度をつけて45度くらいが磨きやすいです。

②1か所5~10秒を目安に、毛先をほとんど動かさないイメージで、歯ブラシを約5㎜の幅で振動させ、歯の表面を磨くと同時に、歯ぐきに適度な刺激を与えてください。これをすべての歯に行います。

このとき、けっして横磨き(大きく横に動かすこと)はしまいようにしましょう。横磨きになってしまう場合は、歯ブラシを小さな円を描くように動かすと振動が小さくなります。それでも横磨きになる人は音波式の電動歯ブラシでブラッシングするといいでしょう。

ブラッシングを行う回数は、歯ぐきが健康な方だったら、その状態を維持するために1日に1回程度でかまいません。

しかし、ブラッシングで出血するようでしたら、歯肉炎の可能性があります。炎症を改善するために1日2回ブラッシングを行ってください。

炎症が歯茎に限定されている歯肉炎の場合、外側から歯肉にブラッシングをして適切なマッサージ刺激を続けていくだけで、出血は1週間程度で治まります。

なぜ、ブラッシングによって出血が止まるのでしょうか?

それは、ブラッシングによる刺激で、歯ぐきの上皮細胞の新陳代謝が進むからです。

新陳代謝が進むと、歯周病によって炎症を起こしていたり、破れて出血したりしていた上皮細胞がどんどん新しく作り替えられます。それによって炎症が治まって引き締まり、出血が止まるのです。

また、よくテレビCMなどで、歯と歯ぐきの間の歯肉溝に歯ブラシの毛先を入れて、中に入った汚れを取り除くようにブラッシングすることをすすめています。しかし、予防歯科学的に見ると、これはあまり意味がある磨き方ではありません。

なぜなら、歯ブラシの毛先を入れたくらいでは、汚れも、そこに棲みつく歯周病菌も完全には取り除けないからです。かえって歯ぐきを傷つけてしまいかねません。

歯周ポケットに毛先を無理にいれなくても、歯ぐきの外側から適切にブラッシングすることで、歯周ポケット内の歯肉上皮の新陳代謝が高まります。その結果、歯ぐきが引き締まり、歯周ポケット内の歯周病菌が少なることが明らかになっています。

 

歯周病予防・改善に大きな効果を発揮する「つまようじ法」

次に「つまようじ法」をご紹介します。

最近は、つまようじ法も有名になりましたので、インターネットで「つまようじ法」と検索すると動画で確認することもできます。

そのためには、まず先に挙げた「歯間に入る歯ブラシ」を用意してください。当院では、pmj社のV7という専用の歯ブラシを使用していますが、普通の歯ブラシでも十分できます。

①歯ブラシを、上の歯では毛先を下に、下の歯では毛先を上に向けて、歯と歯ぐきの境目に当てます。

②下の歯なら、そこから上に歯の表面をすべらせると、歯間に毛先が入ります。その後、元の位置まで戻します。この動きを7~8回繰り返して、毛先を出し入れしましょう。上下の歯のすべての歯間で行います。

③表側の歯間がすべて終わったら、裏側からも同じように行います。裏側は歯ブラシの先のほうを使うなど、毛の当て方を工夫しましょう。

④奥歯の裏側は水平の毛先を入れていくイメージで行うとスムーズにできます。

 

歯ブラシを動かす時のポイントは、毛先を歯間に入れたあとに歯間に入れたままにしないで、完全に歯間から抜いてから、また歯間に突っ込むという「ピストン運動」をすることです。このピストン運動によって、歯間の歯垢が取り除かれるとともに、歯間を含めた歯ぐきが適度にマッサージされる効果があります。

 

歯間ブラシはこう使う

「歯間に入る歯ブラシ」がない場合は、歯間ブラシを使います。

まずは、通常の歯ブラシを使って、スクラビング法で歯全体を磨きます。

そのあとに、歯間ブラシに持ち替え、1つの歯間につき3~4回出し入れします。その際、歯ぐきを傷つけないように歯面に沿ってゆっくり挿入し、前後に動かしてください。

表側からだけでなく裏側からも歯間に入れることができれば、さらに予防効果がたかまります。

日常的に歯間を磨いていない方は、普段の歯磨きでは歯間にまでブラシの毛先が届いていません。そのため、歯間のブラッシングをすると出血することがあります。

出血するということは、まさしく、いま歯ぐきに炎症がある、つまり歯肉炎になっている証拠です。

でも、ご安心ください。

歯間のブラッシングを続けていると、1週間程度で出血しなくなり、歯ぐきが引き締まっていくのを実感できます。

 

歯間を上手に磨くヒント

ある患者さんに、歯間を上手に磨くヒントをもらいました。

それは、私にとっても目からウロコのブラッシング上達法ともいうべきものでした。

ご紹介しましょう。

3カ月に1回程度、60代のご夫婦が、定期的な歯の健康チェックと歯石を取るために、私のところに来院されていました。

あるとき、ご主人が脳梗塞になり、聞き手が不自由になったことからブラッシングが十分にできなくなりました。

そこで、診察室で私がご主人のお口の中を磨いているところを奥様に見てもらい、同じように奥様にもご自宅でご主人のブラッシングをしていただくようにお願いしました。

すると驚いたことに、3か月後に来られたときには、ご主人のお口の中はとてもきれいになっていたのです。歯垢はほとんどなく、歯ぐきも健康になっていました。

さらに驚いたのは、奥様のお口の中も以前よりもずっときれいになり、よく腫れてた歯ぐきもほとんど腫れなくなったというのです。

「夫の口の中を磨いていると、どこにどのように歯ブラシを当てればいいかが、よくわかるようになりました。それを続けているうちに、自分の口のブラッシングも上達したようで、歯ぐきの症状もほとんどなくなりました」

奥様の嬉しそうな顔が忘れられません。

この上達法は、夫婦仲も良くなりますし、実に理にかなっています。

パートナーがいる方や、親の介護をされている方など、ご自宅に一緒に住んでいる方がいらしゃるなら、自分の歯の健康のためにも、時々「自分以外の誰かの歯を磨いてあげること」を試してはいかがでしょうか。いえさき歯科でも「術者磨き」としてスタッフや私が、患者様のために歯を磨いて差し上げることで、ブラッシング指導を兼ねて行っている次第です。

是非、プラフェッショナルが行う術者磨きをご体験ください。

この記事のお問合せ先:阿倍野区西田辺のいえさき歯科

電話:06-6624-4500

HP:www.iesaki.net