いえさき先生のコラム
ダイレクトボンディングとは?その特徴やメリット・デメリットを解説
近年、歯の修復方法として人気が高まっている「ダイレクトボンディング」。手軽に歯の形や色、大きさなどを改善できる点が魅力の歯科治療です。口元の審美性を改善する方法としてはセラミック治療が有名ですが、ダイレクトボンディングは何が違うのか。ダイレクトボンディングで歯を修復するメリットとデメリットも含めて詳しく解説します。
目次
ダイレクトボンディングとは
ダイレクトボンディングとは、歯に直接(ダイレクトに)樹脂製の材料を盛りつけて、光で固める治療法です。その仕組みは、虫歯治療で広く行われているコンポジットレジン修復と同じですが、使用する材料や適応症が異なります。なぜならダイレクトボンディングは、虫歯によって生じた穴を埋めるというよりは、ちょっとした歯の欠けや形の異常、すき間などを改善するために用いられることが多いからです。そのためダイレクトボンディングは審美治療の一環として捉えられる傾向にあります。また、ダイレクトボンディングで使用する材料は、保険診療で使用するコンポジットレジンではなく、審美性や耐久性に優れたハイブリッドセラミックである点も強調しておいた方が良いでしょう。
ダイレクトボンディングをおすすめする方
ダイレクトボンディングは、次のような方に推奨できる治療法です。
- 歯の形や色、大きさを整えたい
- 前歯のすきっ歯を目立たなくしたい
- 忙しいため通院する時間が取れない
- 金属アレルギーがある
- 歯を削る量を最小限に抑えたい
ダイレクトボンディングなら、ハイブリッドセラミックを歯に盛り付けて、その場で成形できるため、歯を理想の形に近付けやすいです。治療も即日終わり、歯を削る量も少ないです。当然ですが金属アレルギーのリスクもありません。
ダイレクトボンディングのメリットとデメリット
ダイレクトボンディングは、次に挙げるメリットとデメリットを伴います。
メリット
- 治療がその日に終わる
ダイレクトボンディングでは、歯型取りが不要です。その場で成形して光で固めることができるため、治療は即日終わるのが一般的です。 - 歯を削る量が少ない
樹脂材料を直接、接着できるダイレクトボンディングは、歯の切削量を最小限に抑えられます。これは従来法である詰め物・被せ物治療との大きな違いです。 - 保険のレジンよりも変色しにくい
ハイブリッドセラミックは、保険のレジンよりも変色や摩耗が起こりにくいです。何かの拍子に欠けたとしても、すぐに補修できます。 - 費用が比較的安い
歯の形や大きさ、色などはセラミック治療でも改善できますが、費用面ではダイレクトボンディングが優れています。
デメリット
- 歯科医師の技術によって結果が変わる
ダイレクトボンディングは、歯型を取って装置を作るわけではないため、歯科医師の技術や知識、経験によって治療結果が大きく変わります。 - 適応範囲が比較的狭い
ダイレクトボンディングは、軽度から中等度の症例に適した治療法なので、重症度の高い症例には向いていません。 - 奥歯の治療には向いていない
奥歯の銀歯を白くする場合は、保険のCAD/CAM冠やPEEK冠、自費のセラミック治療が推奨されます。ダイレクトボンディングは、強い力がかかる部位の治療にはあまり向いていないのです。
ダイレクトボンディングはどれくらい持つ?
ダイレクトボンディングは、手軽に歯をきれいにできて、補修もしやすい治療法ですが、どれくらい持つのかも気になることでしょう。その他の治療法と比較して、寿命が極端に短いのであれば、ダイレクトボンディングを選択するメリットも小さくなってしまいます。そこでまず保険診療のコンポジットレジンの寿命について触れておきましょう。
虫歯の穴などをコンポジットレジンで埋めた場合は、2~3年程度で変色や摩耗が目立つようになります。一方、ハイブリッドセラミックを使うダイレクトボンディングは、4~6年程度はきれいな状態を保つことができるでしょう。つまり、ダイレクトボンディングの寿命は、保険のコンポジットレジンの2倍くらいあるといえるのです。ちなみに、セラミックインレー(詰め物)やセラミッククラウン(被せ物)で治療した歯は、10~15年程度、持つといわれていますが、その分、歯を大きく削らなければなりませんし、治療期間が長く、費用も高いことを忘れてはいけません。
まとめ
今回は、ダイレクトボンディングの特徴やメリット・デメリット、寿命などを解説しました。ダイレクトボンディングは、歯に直接ハイブリッドセラミックを盛り付けて光で固める治療法で、歯の形や大きさ、色調などを改善できます。歯型取りを行う必要がないため、治療は原則としてその日に終わります。セラミック治療より費用が安く、歯を削る量も少ないため、年々、人気が高まっていますが、ダイレクトボンディングも万能ではなく、向いていないケースもありますのでその点はご注意ください。また、ダイレクトボンディングの寿命は4~6年程度で、セラミックインレーやセラミッククラウンよりも短くなっていることを事前に理解しておくことが大切です。