いえさき先生のコラム
前歯のオールセラミック治療の特徴やメリット・デメリットを解説
歯科治療ではいろいろな材料を使用します。最も有名なのは、保険診療でも重宝されているコンポジットレジンで、成形が容易であったり、光で固めることができたりするため、虫歯治療後の修復治療で広く活用されています。次に有名なのがセラミックではないでしょうか。とくにオールセラミックと呼ばれるものは、歯科材料の中で最も美しいと評されており、前歯の治療に向いています。今回はそんな前歯のオールセラミック治療の特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
目次
オールセラミックとは
オールセラミックとは、文字通りセラミックのみで構成された修復物・補綴物です。オールセラミックは、天然歯の色調や光沢、透明感を忠実に再現できる材料なので、前歯の詰め物・被せ物の材料として適切といえるでしょう。ちなみにセラミックは、いわゆる陶器です。料理を盛り付けるセラミック製のお皿も白色で美しく、眩い光沢を放っていますが、歯に使うセラミックも基本的にはそれと同じです。もちろん、歯科治療用に改良されている部分は多々あります。
前歯のセラミック治療に向いているのはどんな人？
前歯のセラミック治療は、次のような人に向いています。
- 前歯の形や色、大きさなどを理想に近付けたい
- 出っ歯やすきっ歯といった前歯部の歯並びを短期間で治したい
- 前歯に大きな虫歯がある
セラミック製の人工歯なら、前歯の形や色、大きさにとどまらず、ちょっとした歯並びの問題なども短期間で改善することができます。もちろん、前歯に大きな虫歯があっても、感染した歯質を削った後にセラミックで補うことが可能です。
オールセラミックのメリットとデメリット
オールセラミックで歯を治療した場合には、次に挙げるメリットとデメリットを伴います。
メリット
- 見た目が自然で美しい
上述したように、オールセラミックなら天然歯の色調や光沢、透明感などを忠実に再現できます。見た目が自然で美しい前歯の人工歯が手に入るのです。神経が死んで黒ずんだ歯や重度の歯の変色などもオールセラミックの被せ物を装着することで、見た目を美しくできます。 - 経年的な劣化が起こりにくい
オールセラミックは、極めて安定した材料なので、経年的な変色がほとんど起こりません。強度も高く、摩耗も起こりにくくなっています。つまり、前歯をオールセラミックで治療してから5年、10年経過しても同様の美しさを維持し続けることも不可能ではないのです。 - 歯質との適合性が高い
保険診療の銀歯やレジン歯は、虫歯の再発リスクが高くなっています。それは人工歯と歯質との適合性があまり高くないからです。一方、オールセラミックは歯質とぴったり適合させることができるため、細菌の侵入が起こりにくく、虫歯の再発リスクも低くなっています。
デメリット
- 保険が適用されない
前歯をオールセラミックで治療する場合は、原則として保険が適用されません。また、オールセラミックは原材料も高額であることから、前歯の治療にかかる費用はそれなりに高くなります。 - 強い衝撃で割れることがある
オールセラミックは、プラスチックより硬くて丈夫なのですが、極端に強い衝撃が加わると割れる場合があります。オールセラミックの弱点です。もちろん、最近のオールセラミックは、強度の面でも優れた材料が使われていますが、それでも金属やジルコニアと比較すると割れやすいといえます。 - 歯を削る量が多い
比較的割れやすいオールセラミックは、銀歯やジルコニアよりも厚めに作る必要があります。それは歯の切削量が多くなることを意味する点に注意が必要です。一度削った歯質は元に戻らないことから、切削量が多くなることは治療上のデメリットと言わざるを得ません。
オールセラミックと他のセラミックはどう違う？
セラミック材料には、オールセラミック以外にもハイブリッドセラミック、e-max（イーマックス）、メタルボンド、ジルコニアといった種類があります。それぞれの特徴をオールセラミックと比較してみましょう。
- ハイブリッドセラミック
歯科用プラスチックであるレジンとセラミックの混合材料です。オールセラミックよりも費用が安く、審美性・機能性・耐久性は劣ります。 - e-max（イーマックス）
二ケイ酸リチウムガラスで作られたオールセラミックです。従来のオールセラミックの「割れやすい」という弱点を克服した材料で、審美性にも優れています。 - メタルボンド
金属の土台の表面にセラミックを焼き付けた被せ物です。オールセラミックより強度が高く、審美性の面では劣っています。また、メタルボンドは金属アレルギーとメタルタトゥーのリスクを伴います。 - ジルコニアセラミック
金属に匹敵するジルコニアを内側に配置し、外側は通常のセラミックで構成された被せ物です。オールセラミックの割れやすいという弱点を克服しつつ、見た目の美しさも追求できますが、天然歯の再現性という観点ではジルコニアセラミックが劣っています。
まとめ
今回は、前歯のオールセラミック治療の特徴やメリット・デメリットについて解説しました。オールセラミックは、歯科材料の中で最も美しいため、高い審美性が要求される前歯部の治療に適しています。オールセラミックは割れやすいという欠点があるものの、e-maxやジルコニアセラミックを選択することで、そのリスクを最小限に抑えられます。前歯の治療で費用をできるだけ抑えたい場合は、ハイブリッドセラミックを第一に検討すると良いでしょう。