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いえさき先生のコラム

全身疾患

奥歯の有無で健康寿命が決まります。

先日、神奈川歯科大学の山本龍生先生のフレイルのセミナーに参加しました。その中で、歯がたくさん残っている人ほど健康寿命が長いことをデータを見せて述べておられました。

先生のお話の一部をご紹介します。

「ある日、大学の私の診療室に、認知症と診断された70代の女性が診察に来られました。お口の中を拝見すると、右下の奥歯のまわりから膿が出て奥歯がグラグラになっています。

かなりひどい状態です。よくここまでがんばってこられたな、と正直思いました。

しかし、痛みもいよいよ激しくなり、日常生活にも支障をきたす状態になったことから家族に付き添われ、来院されたのでした。

診察をすると、ぎりぎりのところで奥歯を残せる状態でしたので、何度か通院をお願いして無事治療を終えました。

その後、家族のほうから、「奥歯で噛めるようになったら、おばあちゃん、嘘のように食欲が戻り、笑顔が出るようになりました。」と私のもとに感謝の電話がありました。

日本人の平均寿命は、明治時代は40代前半でしたが、戦後に50歳、1980年代には75歳を超えました。

そして、現在では男性は約81歳、女性は約87歳と世界のトップクラスで、いまや日本は"人生100年時代"といわれています。

一方、健康寿命というものもあります。健康上の問題で他人の支援や介護を必要とせず、自立して生活を送れる期間のことで、日本人の平均は、男性が72歳、女性が75歳。つまり、平均寿命までの期間は男性で約9年、女性で約12年あるわけです。

この健康寿命と平均寿命の間、身体的な衰えから免れない晩年、誰しもさまざまな問題を抱えます。

ボケる(認知症)などの要介護状態に陥るのもこの期間で、ボケないまでも、加齢とともに認知機能の低下は、誰もが避けて通ることはできません。

いま、日本では65歳以上の高齢者の5人に1人が、介護を必要としています。そして、要介護になった人の5人に1人が、認知症を発症しているのです。国は、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると試算しています。

ボケるか、ボケないか。もちろん、誰も絶対にボケたくなどありません。

じつは、ボケるか、ボケないかの重要なカギは「奥歯の健康」が大きなウエートを占めていることが、近年の研究で明らかになっています。」

私も日々の診療の中で、患者さんに奥歯を失わないことの重要性をお話し、一本でも出来るだけ長く歯が機能するよう治療に取り組んでいきたいと考えています。