いえさき先生のコラム
歯周病の改善が糖尿病を改善につながる
生活習慣病の体表に挙げられる糖尿病ですが、そこにはさまざまな危険が潜んでいます。近年、糖尿病と歯周病が相互に関係していることがはっきりしてきました。
糖尿病は、腎臓や網膜、神経系、血管などに障害を引き起こすことが以前より知られています。最近の研究では、糖尿病(予備軍を含む)の人は、そうでない人に比べ、アルツハイマー病になる危険性が高いという結果が出ました。ほかにも、がんや脳梗塞、心臓病も発病しやすいそうです。さらに糖尿病は患者の口では、歯周病が進行しやすく歯を失いやすいことが以前から指摘されています。糖尿病は血糖(血液中のブドウ糖)が多くなる病気です。その結果、尿が増え唾液の量が減り、口が乾きます。健康な状態では、唾液が口の中の細菌がつくる酸を中和したり毒素を分解したりし、さらに、汚れを洗い流して良い環境を維持しています。したがって、唾液が減ると口の清潔度が悪化するので、歯ぐきを腫らす細菌が増えやすくなりますし、むし歯もできやすくなります。さらに、唾液中の糖分濃度が高くなることは、歯周病菌が増殖しやすい環境を招きます。同時に、細菌をやっつけてくれる白血球も働きが鈍くなり、体の壊れた部分を修復する能力も低下します。
たんぱく質も影響を受けるので、コラーゲン線維の減少や変性により組織の弾性が低下します。つまり、血管にも障害が生じるので、指先などの末梢では血行不良からさまざまな障害が起こります。歯を支える骨や歯ぐきも細い血管を通過する血液によって養われているので、歯ぐきが腫れたり歯を支える骨が吸収したりして歯周病がひどくなりやすい状況を作ります。
また、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールにも影響するので、関連するほかの病気も気になります。
歯を抜いた後や歯石をとったあと三日間は、献血できないのをご存じでしょうか。そのときにできた歯ぐきの傷から細菌などが血管の中に入り込むからです。歯ぐきが腫れたり化膿したりすると、そこに潜む細菌自身や細菌に作られた毒素が血液の流れに乗って全身へ流れます。
歯ぐきが腫れていると、血糖値を下げるインスリンの作用が低下し、普段より血糖値が高くなります。健康な人では、インスリンがさらに分泌され血糖値が下がりますが、糖尿病の人では血糖がコントロールされにくくなります。
実際に、歯周病で腫れた歯ぐきをていねいに掃除したり歯の揺れを止めたりして歯周ポケットを浅くすることに成功すると、血糖値の改善が認められることがよくあります。
歯がぐらついたりなくなったりすると、十分に食べ物を噛むことができません。柔らかい食べ物ばかりで噛む回数が少なくなると、口の中に細菌の塊である歯垢を多くためることになります。あまり噛まずに食べると満腹を感じる前に多量に食べてしまいカロリー超過から肥満になりやすいと言われていますし、食後高血糖を招きやすくなります。過度のストレスも血糖値を高める傾向があります。
回数を多く噛むためには、普段から鼻で呼吸することを心がけておく必要があります。口の中に物を入れた状態では、鼻で息をするしかありません。当然ながら、哺乳類の呼吸は鼻でするものですから、口呼吸ではのどを傷めたり姿勢が崩れたりするなどの弊害が現れます。歯周病の治療とともに、規則正しい生活や鼻呼吸にも努めましょう。
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