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お知らせ

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歯周病と全身疾患の関連性もここまでわかって来ました。

歯周病は心血管疾患、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、ある種のがんなど、歯や口から離れたの組織・臓器などの病気のリスクを明らかに上げることが解っていましす。これらに関してはすでに多くの知見が報告されており、日本歯周病学会からも、それらの知見をまとめた「歯周病と全身の健康」という書物が2015年に発刊されています。その中で、明らかにされた知見やメカニズムを中心お話したいと思います。

歯周病と全身疾患の関連は歯周病原因菌をもととする菌血症と炎症性メディエーターの血流を介しての全身へ波及が原因と考えられています。しかし、この因果関係を説明するエビデンスもまだ十分とは言えないところもあります。また、歯周病とそれら疾患の間には共通の疾患感受性、喫煙など共通のリスク因子もあります。

細菌では、腸内細菌叢のバランスの乱れ(ディスバイオーシス)もいろんな疾患のリスクとなることが解ってきました。それらの疾患の多くは歯周病が関連する疾患と共通するという特徴があります。口腔細菌が腸内層のディスバイオーシスを引き起こし、その結果様々な疾患につながる病理学的変化がおこることも解っています。従来の病気が起こるメカニズムの考え方に加え、この口と腸と全身がつながる病因のメカニズムは、歯周病と全身疾患の関連を解りやすく説明することができると言われています。さらに、腸内細菌叢のディスバイオーシスも逆に歯周病の状態にも影響を与えることも解ってきました。口腔細菌叢と腸内細菌叢は相いに影響を与えながら、口腔と全身の健康に深く関わっていることが明らかになりつつあります。今後も様々な研究からさらに詳しくわかってくるものと思われます。

 

腸を介した歯周病と全身疾患の関連性について

近ごろは、腸内細菌叢のディスバイオーシスと様々な全身疾患の関連に注目が集まっていて、腸活という言葉も良く耳にしますね。スーパーのヨーグルト売り場には多くの乳酸飲料メーカから発売されている多種のヨーグルトが並んでいますね。良いヨーグルトを食べるとお腹の調子が良くなっていろんな病気の予防につながるというコマーシャルもTVで放映されています。腸内細菌と全身疾患の関係性は、一般にかなり認識されてきています。興味深いことに、歯周病が関連する疾患と腸内細菌が関連する疾患はオーバーラップすることも解っています。このようなことから歯周病と全身疾患の関連メカニズムとして唾液に混ざって飲み込まれた歯周病原細菌による腸内環境への影響が注目されるようになってきた。

これまで口腔内細菌は、胃酸や胆汁酸により破壊され腸内にそのまま届くことはないと考えられ、大腸がんや肝硬変などの疾患を除き、口腔細菌の腸内細菌叢への影響についてはあまり注目されてきませんでした。しかし最近の研究によると、そのような病的状況でなくても唾液に含まれる口腔細菌が腸管に定着し、腸内細菌叢を構成する細菌の一つになっていることが明らかになっています。

重度歯周炎患者の唾液中には悪玉菌であるP.gingivalis(プロフィロモナスジンジバーリス)が唾液1ccあたり100万個以上のレベルで含まれているといわれています。ヒトは1日に1~1.5Lもの唾液を産生してそれをそのまま飲み込んでいるので、重度の歯周炎患者はp.gingivalisだけでも100億から1000億個、口腔細菌全体では100兆から1000兆個もの細菌を毎日飲み込んでいることになります。しかも人口胃液を使った実験では、バイオフィルムというバリア膜に覆われた状態に培養したP.gingivalisの耐酸性はかなり高いことが解っています。

腸内細菌叢の乱れによる影響が様々な疾患に及ぼすメカニズムとして考えられるのが以下のようなものがあります。

①腸管のバリア機能の低下とその結果生ずるない毒素血症およびそれに起因する全身的な炎症

②腸管免疫に及ぼす影響(炎症関連T細胞応答の亢進、制御性T細胞など炎症抑制性T細胞応答の低下など)

③細菌が産生する代謝物の変化(短鎖脂肪酸の減少、二次胆汁酸の増加、分岐鎖アミノ酸の増加など)

歯周炎によりディスバイオーシスをきたした口腔細菌を毎日大量に飲み込むことで腸内細菌のバランスが崩れ、細菌の出す代謝物の変化、腸管バリア機能の低下、免疫系の異常が生ずる可能性は十分に考えられるわけです。

 

マウスを用いた実験における腸内細菌叢関連メカニズムの検証

P.gingivalisをマウス口腔から投与すると、腸内細菌叢のディスバイオーシスが誘導されることも解りました。細菌叢が変化し、腸管細菌ではバリア機能に重要な役割をもつタイト結合タンパク遺伝子の発現が低下し、炎症性サイトカイン遺伝子の発現上昇もみられ、腸管バリア機能が障害された結果、血中内毒素レベルも上昇することが明らかになっています。脂肪組織にはマクロファージの浸潤、肝臓では脂肪の蓄積、いずれの組織でも炎症性サイトカイン遺伝子発現が上昇するなど、全身的な炎症所見がみられることも解りました。また、グルコース負荷試験、インスリン負荷試験などを行うと、軽度の耐糖機能異常がみられることもも明らかとなり、これらはそれぞれ肥満、NAFLD、2型糖尿病前駆症状様の変化をしめしていると思われます。

腸内細菌叢がもっている遺伝子の分析から、芳香族アミノ酸と言われる、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどの合成経路が亢進していることが明らかになると同時に、これらアミノ酸の血中レベルも明らかな上昇をすることが解りました。血中の芳香族および分岐鎖アミノ酸レベルは糖尿病発症の予測マーカーとなることが報告されている。より実際の病態を模した環境の影響を調べるため、歯周炎患者と健康な人の唾液細菌を無菌マウスに投与して比較した研究の結果にも同様のことがいえるのです。こうした変化はまさに、腸内細菌叢のディスバイオーシスと様々な疾患を関連づけると考えられるメカニズムそのものととらえることができ、歯周炎と全身疾患の関連に腸内細菌が関わっていることを示唆するものであります。