いえさき先生のコラム
強力な接着剤で、外れにくいセラミック!
ボンディッドレストレーションとは
昨今、「審美歯科」という言葉が一般に浸透し、患者さんが見た目が自然で美しい修復物を希望される機会も増えています。また、審美性や耐久性に優れたコンポジットレジン(詰め物に使うプラスチック)の開発により、保険診療外のダイレクトボンドやハイブリッドインレーなどの応用範囲も拡大しています。
また、アルミナやジルコニアなどの硬いセラミックスが、CAD/CAMシステムにより被せ物として利用され、オールセラミッククラウンももはや特別な修復物ではなくなってきました。このような流れにともなって、クラウンの中の隠れた存在であった支台築造といわれる芯となる土台にも審美性や接着性が求められるようになり、グラスファイバー製の心棒を埋め込む、ファイバーポストコアが主流になっています。
さらに、ラミネートベニアのような審美的な修復物も、審美歯科治療のオプションの1つとなっています。また、ラミネートベニアをさらに進化させた歯を削らないと謳ったスーパーエナメルもあります。この背景には、“できるかぎり健全歯質を残すことが予知性の高い治療につながる”という低侵襲治療=MIの概念の浸透と接着剤の急速な進化があります。平面に貼り付けただけの付け爪様のセラミックスを歯に接着させることもいまや可能となり、接着剤の進化は、この10年で大きな変化を遂げているのです。
このように、審美歯科治療や修復物の材料が変化し普及していくにつれて、歯科衛生士をはじめ歯科医師とともに治療にあたるスタッフに求められるアシスタントワークも変化してきます。なぜなら、現代の審美的な修復物のほとんどは「ボンディッドレストレーション」とよばれる接着を活かした修復物であり、接着歯学の理解なくしてはこの審美歯科治療の成功はあり得ないからです。
接着歯学とは、コンポジットレジンやレジンセメントを思い浮かべていただけるとわかりやすいと思いますが、化学的に歯質と材料が結合することを意味します。この操作は、非常に精密な技術が必要とされるといわれ、押さえておかなくてはならないポイントも多く、同じ材料を使用しても、治療にかかわる術者やアシスタントの力量によって差が生まれるステップといえます。
接着操作の基本
接着操作の基本としてまず理解していただきたいことは、乾燥させないとくっ付かないということです。単純な話、濡れた物の表面に一番身近な接着としてのセロハンテープは、くっつきません。完全に乾燥接着処理時間とは、接着性を高めるための表面処理に用いる薬剤のことで、被着対象である歯質や修復物にはそれぞれに適した前処置が必要です。
特にハイブリッドレジンやセラミックスには「シラン処理」が必要になります。シラン処理することで、接着力が、格段にアップします。
接着を阻害するもの
接着剤を使って外れにくいセラミック修復が、可能になりましたが、実際に接着する上で接着を阻害する因子があります。「何が接着を妨げるのか」を明確に理解していれば、それらを排除するよう気を配ることが、結果として接着力を増し、確実に外れにくいセラミック修復を可能にします。