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いえさき先生のコラム

かみ合わせセラミッククラウン審美歯科

プロビジョナルレストレーションの役割とその実際

プロビジョナルレストレーションとは

いまから約45年前の1974年、日本に初めて「プロビジョナルレストレーション」という概念が紹介されました。それまで、最終補綴が装着されるまでの間に支台歯に装着される磛間的な修復物は「temporary crown(テック、TeK)」と表現するのが一般的でした。しかし、この新しい概念の導入にともなって、最終補綴物装着までの単なる「仮歯」ではなく、最終補綴物への移行期間として歯周組織などとの調和や環境の整備を図り、最終補綴物に向けて総合評価を行う歯冠修復物「プロビジョナルレストレーション」が臨床に取り入れられるようになりました。

「テンポラリー(temporary)」が「磛間的な」「仮の」を意味するのに対し「プロビジョナル(provisional)」とは「provide」(準備をする)という意味をもちます。つまり最終補綴物がより望ましい形態で、そしてよりよい環境下で装着されることを目的とした、修復治療の1つの段階としての修復物が「プロビジョナルレストレーション」なのです。

プロビジョナルレストレーションにどうかかわるか

プロビジョナルレストレーション装着期間は、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士がそれぞれの専門的視点から経過観察と評価を繰り返し行います。プロビジョナルレストレーションの役割を下に示します。

プロビジョナルレストレーションの役割
  • 歯髄、歯質の保護
  • 機能の回復
  • 審美性の回復
  • 歯の移動防止
  • 支台歯形成の状態と削除量のガイド
  • 欠損補綴の支台歯決定のガイド
  • 歯肉の反応の評価
  • 清掃性の評価
  • 咬合の改善と安定
  • スプリンティングの範囲とデザインの決定
  • 咬合採得の指標
  • 矯正治療への利用

歯周組織を評価する

プロビジョナルレストレーションでは、歯周組織が捕綴物に対してどのように反応しているかをみることが非常に重要です。歯肉と補綴物の密着性や歯肉の微細な反応は、当然のことながら模型だけでは判断できず、実際に実物ではないにせよ補綴物を口腔内に装着してはじめて確認することができます。

清掃性の評価

患者さんのプロビジョナルレストレーションをはずした時、はずした後の歯肉は見えていても、はずしたプロビジョナルレストレーションはじっくりと観察していない方が多いのではないでしょうか。患者さんのセルフケアや修復物の清掃性を評価するためには、歯肉に炎症が生じていないかを確認するとともに、修復物のところにプラークが残存しているかを評価することが不可欠です。プロビジョナルレストレーションがどんなに審美性にすぐれ機能的にも問題がなく、患者さん自身も満足していたとしても、清掃性において問題があれば、長期的な安定を得ることはできません。清掃性の点で問題があると判断した場合は、その原因が「セルフケアにおけるプラークコントロールレベル」「適切な清掃器具の選択」に問題がある場合は、再度患者さんに清掃方法や器具の使用について指導します。また、修復物の形態が原因と思われる場合は、歯科医師・歯科技工士に現状を明確に伝え、審美性、機能性、清掃性をいかにして両立させるのかを検討していくことが大切です。

患者さんのモチベーション維持を図る衛生士の役割

前述したように、プロビジョナルレストレーションはさまざまな角度からの評価を繰り返し行うため、患者さんによっては長期にわたってプロビジョナルレストレーションの期間が長く続く場合もあります。この時期に、歯科衛生士に求められる重要な役割の1つは、患者さんのモチベーションを維持させることです。プロビジョナルレストレーションはテンポラリークラウンとは異なり、審美的にも機能的にもかなり最終補綴物に近い形態が求められるため、プロビジョナルレストレーション装着中の患者さんから、「何でも食べられるし形態もきれいだし、私はこれで十分満足しているんだけど・・・」といった声を聞くことは少なくありません。このような声は、ある意味では最終補綴物にかなり近い形態に列達している証でもあるともいえますが、患者さんがプロビジョナルレストレーションの意味を明確に理解していないと、来院中断の理由にもなりかねません。そのため、まず歯科衛生士がプロビジョナルレストレーションの意義を理解し、治療の状況を患者さんにわかるように繰り返し説明することも、審美修復治療の成功に欠かせない、歯科衛生士の重要な役割といえるでしょう。では、審美修復治療におけるプロビジョナルレストレーションの役割を、実際の臨床例を通して解説します。

審美修復治療におけるプロビジョナルレストレーション作製装着から最終補綴物装着までのステップ

術前の口腔内所見、虫歯や変色した歯が多く審美性の悪い口腔内です。主訴は「形態と色調を改善してほしい、口元が貧弱に感じられるので、再治療をしてほしい」

診断用ワックスアップから作製されたプロビジョナルレストレーションを装着する

ファイナルプロビジョナルレストレーション。図4からこの段階に至るまで、歯科衛生士、歯科技工士とともに経過観察しながら、生理的調和や機能、清掃性をはじめとするさまざまな評価を繰り返し行い、それらの条件を全て満たした段階で最終補綴物へと移行する

 

最終補綴物装着時