いえさき先生のコラム
ホワイトニングを成功させるには!
目次
ホワイトニングの方法と材料
歯を白くする方法は、大きく5つに分類することができます。
1.機械的歯面清掃
茶渋やタバコのヤニ、口腔細菌産生色素などによる外因性着色は、機械的歯面清掃(電動ブラシに歯磨きペーストを付けて磨く)で効果が得られます。
ただし、アマルガムやフッ化ジアンミン銀などの金属による着色は除去できません。
2.歯のマニキュア(ホワイトコーティング)
歯質を削らず、その日のうちに歯の色調を改善することを目的とした方法で、専用のブラシやバニッシャーを用いて白いコーティング剤を紙面に塗布します。
耐久性は1~3ヵ月で、除去・再塗布ができます。簡単ではありますが、効果はそれなりです。
3.ホワイトニング(薬剤による漂白)
1)オフィスホワイトニング
歯科医院で行う方法で、歯面に薬剤を塗布し可視光線を照射することによってホワイトニング効果を得ます。その日に1回で、白くなることが特徴です。
2)ホームホワイトニング
歯科医師の診断のもと、専用のマウスピース(ホワイトニングトレー)のなかにホワイトニングジェルを自分で注入し、装着することによってホワイトニングをする方法です。
日本では「NITEホワイト・エクセル」(アストラテック)、「松風ハイライトシェードアップ」(松風)、「オパールエッセンス10%」(ULTRADENT JAPAN)などがありますが、
主成分はすべて過酸化尿素です。
3)デュアルホワイトニング
オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを併用する方法です。併用することで、かなりのホワイトニング効果が得られる方法です。
4)失活歯のホワイトニング
- ウォーキングブリーチ:過ホウ酸ナトリウムと30%過酸化水素水を混和したペーストを歯に開けた穴に填入し、仮封をします。約1週間後に1回のペースで3~4回繰り返すことによって歯を白くする方法です。
- ウォーキングブリーチ以外の方法:失活歯に対しても、オフィスホワイトニングやホームホワイトニングを行う場合もあります。
ラミネートベニア
薄い付け爪状のセラミックべニアを作製し、貼り付けることでどんな色にもすることができます。また、軽度の歯並びのガタガタも改善することができます。
今では、歯を削らないで出来るスーパーエナメルラミネートべニアとスーパーエナメルのいって?というものもありますよ。
5.オールセラミッククラウンなど
咬合関係や歯列不正、舌側(口蓋側)を含む歯の形態改善が必要な場合は、ホワイトニングやラミネートベニアの適応からはずれます。患者さんが保険診療を希望される場合は、レジン前装冠になりますが、最近は金属の裏打ちがないセラミッククラウンを選択することが多くなっています。
ホワイトニング法の選び方
歯科医師による歯の検査・診断が終了し、変色の原因がある程度明らかになると、次にホワイトニング方法を選択します。全身疾患の有無や通院条件も重要な選択基準になります。原因や状況に合わせたホワイトニング方法選択の基準とホワイトニングを行うにあたってのポイントを下に示します。
タバコやお茶、口腔細菌産生色素などによる外因性着色
- 機械的歯面清掃(PTC・PMTC)
- 除去可能と思われるもっとも細かい粒子のペーストを使用する
ホワイトニング直後の着色と知覚過敏を予防したい
- 機械的歯面清掃(PTC・PMTC)
- 最終仕上げ研磨用や研磨剤無配合のペーストを使用し、フッ化物で仕上げる
歯自体を白くしたいわけではない場合
- 機械的歯面清掃(PTC・PMTC)
- ホワイトニングを無理に勧めず、PTCでも効果があることを説明する
無カタラーゼ症、妊娠中・授乳中でホワイトニングができない場合
- 機械的歯面清掃(PTC・PMTC)
- 無カタラーゼ症の方は、ホワイトニングは、できません。
重度の象牙質知覚過敏症だが歯を白くしたい
- 機械的歯面清掃(PTC・PMTC)
- 超音波スケーラーの禁忌症でもあるため、ポリッシングで対応する
特定の日(結婚式など)だけ歯を白くしたいが、時間がない方
- 歯のマニキュア
- 耐久性は1~3ヶ月であるため、メインテナンス(再来院)が重要
笑ったときに見える金属を隠すとどんな感じになるかを試してみたい方
- 歯のマニキュア
- 金属面に専用プライマーを用いれば、金属色も遮蔽できる
打撲による1歯のみの変色で、根管治療の既往がない場合
- ウォーキングブリーチ
- 電気歯髄診とX線検査が必要である。失活歯であれば、感染根管治療を行う
無髄歯の変色で、患歯以外の歯のホワイトニングを希望されていない場合
- ウォーキングブリーチ
- 歯質が十分に残存している場合は、ウォーキングブリーチを選択できる
打撲・抜髄後の変色歯で、深い亀裂があり、ウォーキングブリーチが困難な場合
- オフィスホワイトニング
- 失活歯であるが、管理下で行ったほうが安全である
ホームホワイトニング適応の軽度のテトラサイクリン変色歯であるのが、自分で行うことに不安を感じている場合
- オフィスホワイトニング
- テトラサイクリン変色歯には、長時間薬剤が接触するホームホワイトニングのほうが有効とされているが、そのことを十分に説明したうえでオフィスホワイトニングを行う
ホワイトスポットや亀裂などを避けて選択的にホワイトニングをする必要がある場合
- オフィスホワイトニング
- 亀裂は光重合型歯肉保護用レジンを用いてカバーするとよい
少数歯に対して隣在歯とのバランスを確認しながらホワイトニングを行う必要がある場合
- オフィスホワイトニング
- 知覚過敏などの症状を確認する必要がある場合も同様である
失活歯が変色しているが、ほかの歯も全額的にホワイトニングを希望されている場合
- ホーム/オフィスホワイトニング
- ホームまたはオフィスホワイトニングで失活歯を含めた全ての歯をホワイトニング後、必要に応じて失活歯についてのみ追加ホワイトニングを行う
小さいレジン修復が認められる歯
- ホーム/オフィスホワイトニング
- 修復物にはホワイトニング剤が効かないので、終了後に再修復が必要になる可能性があることを説明する
ホワイトスポットが顕著に認められる歯
- ホーム/オフィスホワイトニング(必要に応じてレジン修復)
- ホワイトニングを始めるとホワイトスポットが強調されるが、継続によって周辺歯質が白くなると徐々に目立たなくなることをあらかじめ説明する
呼吸器疾患(喘息)や光線アレルギー、ある種の膠原病(全身性エリテマトーデス)の既住がある方
- ホームホワイトニング
- 過酸化水素ガスが発生し、光照射を有するオフィスホワイトニングは禁忌
テトラサイクリン変色歯でラミネートベニアの適応であるが、歯を削りたくないと希望された場合
- ホームホワイトニング・デュアルホワイトニング
- 2週間ごとに再評価し、患者さんと相談を大切にしながらゴールを設定することが大切である
高齢であるが歯の着色・変色を改善したい場合
- ホームホワイトニング
- 高齢者の歯は若年者と比較するとホワイトニング効果が出にくいといわれているので、時間と期間がかかる可能性をあらかじめ伝え、過度な期待を与えないことが大切である。
歯の色調改善だけでなく、形態も変えたい場合
- ラミネートベニア・全部被覆冠
- 歯質削除量の少ないラミネートベニアが理想だが、咬合関係の問題で不可能な場合もある