いえさき先生のコラム
診療の幅を広げるiTeroエレメント2の臨床応用
近頃、矯正歯科のデジタル技術は著しい進化を遂げ続けています。その代表的株の技術革新と言えるのがアライナー矯正です。診療の現場においてもアライナーによる矯正歯科治療はこの10年程で大きく進化し一般に浸透してきました。この主な背景には、以前は目立たず見た目が良いという長所から成人の矯正治療として注目されていましたが、現在は成長期の子どもをターゲットとするアライナー治療も可能になってきています。これら成長期の子どもをターゲットとするアライナー治療では、歯が萌出の途中で行うため、治療期間中に新たに生えた歯の形態を何度も象りして仕上げの治療を行うことが必須になってきます。この作業を今までははシリコンなどのゴムで印象で歯型を摂っていましたが、動揺の大きな乳歯がある子どもなどの場合は歯型を摂るときに痛みや違和感をともなう場合もあり、歯型摂りが難しく、適応できる症例や開始や歯型摂りのタイミングも限定的でした。しかし現在では、アイテロに代表される口腔内スキャナー(イントラオーラルスキャナーIOS)の登場によりデジタルによる印象採得が可能になり、従来のゴム系の象り材を使ったものでは難しかった混合歯列期の子どもでも快適な治療が可能になりました。
iTeroエレメント2の導入
現在日本でインビザラインによるアライナー治療を行う場合、データの送信に使える機器はiTeroエレメント2のみであるため、IOSを用いる際はiTeroエレメント2を導入する必要があります。iTeroエレメント2の特徴としては、バッテリーが内蔵され、チェア間を移動して利用する際にプログラムを終了してコンピューターの電源を落とす作業を省き自由に院内を移動できることと、モニターの画面が21.5インチと少し大きくなったこと、バージョンアップしたプロセッサーCPUにより処理能力がアップした点が挙げられます。このIOSは、ただ単に新しいアライナーを製作するための印象採得という目的以外に、矯正歯科を支援する独自のソフトウェアを有しているというのがその特徴です。また、補綴モードも有しているため、セラミッククラウンやラミネートべニア、インプラントの上部構造を作るためのスキャンが出来ます。
以下にその特徴的な機能を紹介します。
①プログレス・アセスメント
プログレス・アセスメントは、治療後に開始時の位置との比較をすることで、カラーコードを参照し治療計画の進歩をモニタリングを可能にできます。
②タイム・ラプス
タイム・ラスプでは、時系列のデータの比較に便利で、ルーペを当てた部分のデータを動画で確認することが可能になります。正中離開の歯牙移動の確認をしている例では、成長期の子どもの治療において、咬合の変化によって治療開始のタイミングを待っている際に、過去のデータからその変化を可視化することで、わかりやすいコンサルテーションが可能です。
③アウトカム・シミュレーター
アウトカム・シミュレーターでは、数分で口腔内の現状と治療後の状態を表示することができる。矯正治療を検討する患者の歯列の未来をビジュアル化し、その場でさまざまな方向からイメージを示すことにより、治療をすることとしないことのメリットやデメリットのディスカッションが可能になります。また、その立体的なデータを治療を検討する患者のスマートフォンやパソコンに送信することができます。これにより、コンサルテーション時に同席できなかった家族や友人と、送信データを基に治療開始前のディスカッションも可能になります。
iTeroエレメント2は、アライナー製作のための目的だけではなく、新患のコンサルテーションや矯正治療中のフィッティング、また歯列の経年的な変化を比較できるようなツールとして活用でき、今までとは違った患者とのコミュニケーションを可能にするものです。